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Aligned ―プロダクト開発におけるステークホルダーとの関係性の築き方

Aligned ―プロダクト開発におけるステークホルダーとの関係性の築き方

プロダクトマネジメントにおいて非常に重要な要素の1つである「ステークホルダー」の扱いにフォーカスした書籍です。 Helthexという会社にプロダクトマネージャーとして転職してきたアイリーという主人公が、組織のなかで奮闘するストーリーを通じて、ステークホルダーとのつきあい方、関係性の作り方を解説していくという構成になっています。 フルカラー、図表も豊富で、読んで楽しい本なのではないかと思います。

  • 著者/訳者: Bruce McCarthy、Melissa Appel、吉羽龍太郎、原田騎郎、永瀬美穂
  • 出版社: オライリージャパン
  • 発売日: 2026-3-4
  • 単行本(ソフトカバー): 300ページ
  • ISBN-13: 9784814401499
  • ASIN: 4814401493
詳細

オライリー・ジャパン様のご厚意で、訳者あとがきの転載許可をいただいたので紹介します。 どんな書籍なのかイメージがつきやすいかと思います。

本書は、Bruce McCarthy、Melissa Appel 著『Aligned: Stakeholder Management for Product Leaders』(978-1098134426、OʼReilly Media、2024年)の全訳です。原著の誤記や誤植などについては確認して一部修正しています。

プロダクト開発において、私たちは常に「人」と向き合っています。どれだけ優れたアイデアや技術があっても、それを形にし、価値に変えていくには、多くの関係者と理解を共有しながら進める必要があります。にもかかわらず、「人との関係」がうまくいかずに、前に進めなかったり、成果を最大化できなかったりする例は枚挙に暇がありません。 本書『Aligned』が扱っているのは、まさにその「人との関係」、つまりステークホルダーとの関係性をどう築き、どう維持し、どう乗り越えるかという点です。そしてそれは、プロダクト開発に関わるすべての人にとって避けて通れないテーマだと言えます。

プロダクトには、プロダクトマネージャー、開発者、デザイナー、営業、カスタマーサポート、経営層など、実にさまざまな人たちが関わっています。それぞれ、立場や期待、評価軸はバラバラで、相反することもあります(むしろ相反していることのほうが多いかもしれません)。これらの違いを無視したままプロダクトの開発を進めると、思わぬ衝突や行き詰まりに直面することになります。

私たちはアジャイルコーチとして多くの現場に関わってきましたが、チーム内部の課題以上に、チームの外との関係性、すなわちステークホルダーとの調整や期待値の管理に悩む声を多く聞いてきました。十分な説明や対話もなく、リクエストが「指示」として降ってくる(メテオフォールなんて言ったりしますね)。その指示の背景がわからず、振り回されている感覚だけが募る。気づけばプロダクトマネージャーもチームも疲弊していく。それでもプロダクトがうまくいっていれば少しは報われますが、そうでもない。そんな状態が、実はあちこちで起きています。

そのような状況が長く続くと、「フィーチャーファクトリー(機能工場)」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。これは、プロダクトマネジメントの専門家ジョン・カトラーが提唱した概念で、「言われた機能をただ作ること」に終始し、「なぜ作るのか」や「どんな成果を目指すのか」といった本質的な問いが置き去りにされた状態を指します。

フィーチャーファクトリーに陥ったチームでは、「とにかく出す」「数をこなす」「早く終わらせる」といった指標ばかりが重視され、本当の意味で顧客やユーザー、ビジネスに貢献できているかをふりかえる余裕がありません。アウトカムよりアウトプット、学習よりスピード。こうした文化では、チームが「仕様をもらって実装するだけの存在」に矮小化され、プロダクトを育てる主体性を失ってしまいます。

これは、プロダクトに関わる全員にとって不幸な状態です。ステークホルダーもまた、自分の声が届かない、自分の目的が共有されないと感じて苛立ち、関係はさらにぎくしゃくしていきます。

では、どうすればこの悪循環を断ち切れるのでしょうか。

本書は、フィーチャーファクトリーのような状態から抜け出し、ステークホルダーと良い関係を築くための「実践の書」です。ただ仲良くしようとか、言いなりになろうという話ではありません。むしろ、どこで「ノー」と言うか、どう伝えるか、どのように共通の目的を見つけるかといった、現場で本当に困っていることに正面から向き合っています。

物語のなかで主人公アイリーは、何度も壁にぶつかりながら、相手を知り、関係性を築き、少しずつアラインメントを形にしていきます。フィクションでありながら、その描写はかなり現実的で、プロダクトに関わる仕事の複雑さや手触りがよく伝わってきます。理論やツールだけではつかみにくい「実際にどう動けばよいか」を具体的なシーンを通じて考えるきっかけになるはずです(本書のシーンに実際に遭遇している人が多々いるのではないかと思います)。

本書に登場するツールやフレームワークは、組織図をどう読み解くか、信頼をどう築くか、会話のタイミングをどう計るか、そしてどう「難しい人」と付き合うかなど、すぐに現場で使えるものばかりです。自分たちの置かれている状況をふまえて、試してみるとよいでしょう。

プロダクトは、一人ではつくれません。周囲の人たちを理解し、巻き込み、対話を重ねながら進めていくことで、初めて価値が届けられます。

本書が、みなさまのお役に立てば幸いです。

謝辞

粟田 恭介さん、飯田 意己さん、太田 陽祐さん、小笠原 晋也さん、小澤 暖さん、粕谷 大輔さん、小糸 悠平さん、斎藤 紀彦さん、菅原 円さん、田口 昌宏さん、中原 慶さん、萩田 篤さん、古橋 明久さん、森 一樹さん、山田 悦朗さんには長期間にわたり翻訳レビューにご協力いただきました。

みなさんのおかげで読みやすい書籍になったと思います。

企画、編集は、オライリー・ジャパンの高恵子さんが担当されました。いつも手厚い支援をいただいていることに感謝いたします。

訳者を代表して
2026年 3月
吉羽 龍太郎
詳細
アトラクタのアジャイルコーチング

自立したアジャイルチームを育てる支援。経験豊富なコーチが現場と組織に伴走します。

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