2021年12月1日に弊社吉羽、原田、永瀬が翻訳した『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』が発売になりました。

どんな本か?

Matthew Skelton、Manuel Pais著『Team Topologies: Organizing Business and Technology Teams for Fast Flow』(ISBN: 978-1942788812)の全訳になります(Amazon.comでの評判はこちらをご参照ください)。

現代の組織における開発チームの構成と配置について扱っています。 自社でどのように開発組織を構成し、変化させていくと良いかを悩んでいる方には参考になるのではないかと思います。

みどころ

みなさんは「コンウェイの法則」について聞いたことがあるでしょうか? これは「システムを設計する組織は、その構造をそっくりまねた構造の設計を生み出してしまう」という法則で、1968年にメルヴィン・コンウェイが書いた論文が元になっています。 50年も前にできた法則が今どう関係あるの?と思うかもしれませんが、現代のソフトウェアにおいてもこの法則は当てはまります。 ソフトウェアのアーキテクチャーとチーム構造は不可分(自己相似形)であり、アーキテクチャーにあわないチーム構造を選択したり、チーム構造にあわないアーキテクチャーを選択すると問題が起きます。

例えば、伝統的な(古典的な)ソフトウェア開発の現場で、コンポーネント単位のチームや専門スキル別のチームに分けてしまうと、さまざまなチームが集まって調整を行ったり、日々の仕事のなかでチームをまたいでコミュニケーションを行ったりする必要が出てきます。 しかし、このようなやり方は、コミュニケーションコストが高く、常に何かを待つことになり、ソフトウェアを出荷するのは大変な苦労が伴います。 関係者は多くのことを知らなければならず、認知負荷も高くなります。 こうなると、ビジネスの要求する速度に追随することもできません。

チームトポロジーは、このコンウェイの法則を踏まえたチームファーストのアプローチです。 「チーム構造と組織構造を進化させて、望ましいアーキテクチャーを実現する」という逆コンウェイ戦略を実現するために、4つのチームタイプと3つのインタラクションモードを定めています。 それをもとにフローを最適化する組織を設計しようというのが肝です。 なお、組織の設計は固定的なものであるべきではなく、組織やプロダクトの進化に応じて、漸進的に変化していかなければいけない、という点についても強調しています。

本書で紹介しているチームタイプは4種類で、開発組織のチームは4種類のうちのどれかになります。

  • ストリームアラインドチーム: ビジネスの主な変更フロー(つまりバリューストリーム)に沿って配置するチーム。職能横断型で、他のチームを待たずにデリバリーできる。いちばん中心となるチームタイプ
  • プラットフォームチーム: インフラやツール、共通サービスなどを提供するチーム。これによってストリームアラインドチームは詳細を知る必要がなくなり認知負荷が下がる
  • イネイブリングチーム: 他のチームが新しい技術やスキルを身につけるのを支援するチーム。永続的に支援するのではなく、短期的な支援となるのが普通
  • コンプリケイテッド・サブシステムチーム: 名前のとおり複雑なサブシステムやコンポーネントを扱う専門チーム。必要なときだけ構成する

インタラクションモードは3つです。インタラクションモードとはチーム同士の関与の仕方、関係性を表したものです。

  • コラボレーションモード: 2つのチームが探索を目的として協力しあう。責任境界が不明確で効率は悪いが学習は進む
  • X-as-a-Serviceモード: 一方のチームが他方のチームが提供するものをサービスとして利用する関係性
  • ファシリテーションモード: 一方のチームが他方のチームが新しい技術を身につけたり学習したりするためにファシリテーションする

4つのチームのうち、ストリームアラインドチームが根幹となるチームで、このチームが素早くデリバリーできるようにするために他のチームが周りにいて、規定したやり方でコミュニケーションするという構図になります。 本書では、さまざまな事例を交えながら、このアプローチの有効性を解説しています。 事例には、Amazon、Adidas、Spotifyなども登場します。

本書の翻訳にあたっては、角谷信太郎さん、粕谷大輔さん、後藤優一さん、竹葉美沙さん、常松祐一さん、西谷圭介さん、松木雅幸さん、吉田真吾さんに翻訳レビューにご協力頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

企画、編集は、日本能率協会マネジメントセンターの山地淳さんが担当されています。

是非お手にとって頂ければ幸いです。