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なぜアジャイル開発では「コーチ」なのか?

アジャイル開発を実践するとき、アジャイルコーチと名乗る人たちに支援を求めることがあります。

パーソナルコーチやエクゼクティブコーチという仕事は聞いたことがあるかもしれませんが、特にこれからアジャイル開発を始める方にとっては、アジャイルコーチが何をしてくれる人たちなのか、なじみのない方も多くいるのではないでしょうか。

この記事では、アジャイル開発ではなぜ「コーチ」という仕事があるのかを説明します。

アジャイル開発に必要なもの

アジャイル開発を新たに始めるとき、どのように始めたらよいか迷うことが多くあります。初めてのことなのでわからないことだらけです。会社のなかでも注目されているでしょうし、いつものプロジェクトよりスムーズな滑り出しをしたいものです。一方で、すでに取り組んでいる方であっても、なにかうまくいっていない気がする、もしくは漠然と、より上手にできるようになりたい、という場合もあります。

アジャイル開発は変更可能性のない確実な計画は事前に作ることができない、という前提に立ち、プロダクト開発中に起きた事象を検証し、適応していくことで成功確率を高めようとするアプローチです。

そのため、アジャイル開発を上手にするためには、自ら考え、実行し、変化に素早く対応できる機敏さを発揮できるチームが必要です。 つまり、完成された完璧なチームを用意するのではなく、学習を重ねていけるチームを作ります。 これはこれまでのソフトウェア開発では中心に取り上げられていない考え方です。

それでは、この学習の繰り返しを上手に進めてるにはどうしたらよいでしょうか。「ベストプラクティス」を身につけるとよいのでしょうか?

いいえ、違います。

プロダクトを取り巻く環境とベストプラクティス

プロダクトとチームを取り巻く環境は今の世界ではとても不透明です。プロダクトのユーザーが誰なのか、どう使われるのかを明らかにするために、仮説と検証の積み重ねが必要ですし、チームのメンバー構成、スキルの高さや得意とする分野、稼働状態も変化します。さらに、ひとつの変更の影響範囲が予想外に大きくなったりしますし、どのような変更が起きるのかすら事前の予測が困難です。つまり、プロダクトとチームを取り巻くあらゆるものは、当初の予定通りにいきません。

こういった分野への取り組みでは多くの「ベストプラクティス」は陳腐化しやすく、何かしらの「ベストプラクティス」を仕入れてやってみたはいいものの、陳腐化した「ベストプラクティス」では思うような成果が出ず、「こんなはずではなかった。このベストプラクティスは役立たずだ」と断ずることになります。

ではプロダクトとチームを成長させるものは何でしょうか。

ベストプラクティスという道具を使うことのみに習熟するのではなく、自ら目的を設定し、必要なベストプラクティスを生み出し、変化する状況に応じて自ら行動できるチームになることがプロダクトの成長に寄与するのです。 そのためには、予測が困難な環境変化に素早く対応できる動き方、考え方を身につけなければいけません。

アジャイル開発は自転車に乗ること

アジャイル開発に求められる動き方、考え方という観点で、自転車をメタファーにして考えてみましょう。自転車に初めて乗ろうとするとき、本を読んだり、自転車に乗っている人を見たりしても、自分が乗れるようにはなりません。もちろん、自転車のハンドル、ブレーキ、といったパーツの名前や、ハンドルを持ってサドルに座りペダルを回すという基本的な操作についての知識はあったほうがよいのは間違いありません。それでも、自転車に乗れるようになるには、後ろから支えてもらったり、時には転んだりしながら、繰り返し実践することでしか乗れるようにならないのです。

同様に、アジャイル開発においても、基本的な知識の座学やワークショップといった研修も入り口としては効果的です。

ただ、それだけでは不十分です。アジャイル開発を前提としたときに、何をプロダクトで最も優先すべきなのか、何がチームの足を止めているのか、成果を生むプロダクトを継続して生み出していくチームに成長するためには今のチームの何をどう変えるのが効果的なのか、そういったプロダクトとチームを成功させる意思決定と行動は、実践で経験しないとできるようになりません。

アジャイル「コーチ」である理由

その際、致命的な失敗に注意しつつプロダクトとチームの全体を見守ったり、知見と経験にもとづいた示唆をしたりすることで、効果的なプロダクトを生み出せる自立したチームになっていくことを支援するのがアジャイルコーチです。

ひとりで走れるようになれば自転車の後ろを支えなくてもいいように、アジャイルコーチはチームを自走できるようにします。そのため、アジャイルコーチの成功基準のひとつはチームから不要とされることです。

アジャイルコーチは、自分が去ったあとも、チームが自らアジャイル開発においてどのような考え方をするのか考え、行動できる能力が育つように働きかけます。

これがアジャイル開発の支援をする仕事をアジャイル「コーチ」と名乗る理由です。

アトラクタはアジャイルコーチの会社です

アジャイルコーチングを提供している会社はさまざまありますが、弊社もアジャイルコーチングを中心とした会社です。 具体的な支援内容は、アジャイルコーチングのページに記載がありますので、そちらもご覧いただけると参考になるかと思います。

もちろんご相談も承っています。ぜひお問い合わせください。