Q. 期日までにリリースできるかどうかはどうすれば分かりますか?

大前提として、アジャイルは不確実性への対処を主な目的としたものであり、「決められたものすべてを決められた時期までにやりきる」ためのものではないことを理解しておいてください。鉄の三角形にあるように、スコープ・納期・コストのうち、同時に固定できるのは2つまでです。そしてアジャイルの場合はスコープを調整するのが原則です。

さて期日までにリリースできるかどうかは、ベロシティを使うことで算出できます。 ベロシティはスクラムでよく使われるプラクティス(スクラムガイドでは定義されていません)で、スクラムチームが1スプリントで完成させたプロダクトバックログアイテムの見積りの合計を表す数字です。 スプリント単位で多少の増減はあるので、数スプリントの平均値を使うのが一般的です。 この数値を使うことで、スクラムチームが1スプリントあたりどれくらいのプロダクトバックログアイテムを完成できるかを想定できるようになります。

ベロシティが分かれば、期日までにリリースできるかどうかは以下の計算式を使えば判断できます。

必要なスプリント数 = リリースに必要なプロダクトバックログアイテムの見積りの合計 ÷ベロシティ

例えば、リリースまでに必要なプロダクトバックログアイテムの見積りの合計が250ポイントで、ベロシティが25ポイントだとすると、必要なスプリントの数は、250 ÷ 25 = 10スプリント となります。 これが期日以内であれば達成可能です。

別の例として、残りのスプリントが5スプリントしかない場合は、そこまでに達成可能なのは、25 * 5 = 125 となり、残りの分についてはスコープから外すといった判断が必要になります。

なお、上記の例は、プロダクトバックログを静的なものとして扱っていますが、実際は違います。 スプリントレビューなどでのフィードバックや新たな発見、環境の変化などによってプロダクトバックログの中身は常に変化します。プロダクトバックログアイテムが増えたり減ったりします。 それを踏まえて見通しを立てていく必要があるので注意してください。

スクラムチームとして重要なのは、当てにならない約束をするのではなく、透明性を保ち、今後の見通しを常に関係者の間で共有することです。 期日までにリリースできそうかどうかもスプリントごとに見通しを更新するようにしてください