ベロシティの活用方法を教えてください
ベロシティを生産性指標として扱おうとする組織やチームは多いですが、これは間違った考え方です。
生産性には2種類あり、1つが「物的生産性」、もう1つが「付加価値生産性」です。 ベロシティは単位時間あたりのおおよその生産量を示しており、これは前者の「物的生産性」になります。 一方で、スクラムやアジャイルが目指しているのはプロダクトによる成果であり、重視するのは付加価値です。 スクラムにおいて「付加価値生産性」は「プロダクトによる効果 ÷ 投入資源」となり、これは生産量とは関係ありません。
これを踏まえると、ベロシティはスクラムチーム自身が、現状を把握し、今後の見通しや作業計画を考えるために使うことになります。
例えば、以下の用途に使います。
- 今回のスプリントで、どれくらいのプロダクトバックログアイテムを完成できそうかを予測する
- 残りのスプリント回数を踏まえると、どのくらいのプロダクトバックログアイテムを完成できそうかを予測する
- 必達のラインにあるプロダクトバックログアイテムを完成させるために、何スプリントくらい必要かを予測する
なお、予測はデータが集まるほど精度が上がります。つまりスプリントを繰り返し、スクラムチームが成長するに連れて、当初の予測を更新していかなければいけません。予測は約束にならないことには注意しましょう。
最後に、ベロシティを使うときのコツをいくつか紹介しておきます。
- ベロシティは、同一プロダクトバックログに取り組むチーム以外とは比較できません
- ベロシティを使うのはスクラムチーム自身です。スクラムチーム外の人がベロシティを使うのは意味がないどころか害を与えます
- ベロシティを見るときの観点のなかで重要なのは、どれくらい安定しているかです
- 例えば、10→30→0→40→10→30のように推移している場合はまったく安定していません。これが意味することは複数考えられますが、完成していないプロダクトバックログアイテムを次のスプリントに持ち越ししているとか、リファインメントが甘そうといったことです
- 逆に、30→25→32→36→28→34のように推移していれば、このチームはおおよそ30くらい作れるチームだと考えて、それを踏まえてスプリントプランニングをしたり、今後の予定を考えたりできます
- 少々の数字の増減を一喜一憂しないでください。見積もりの数字自体もざっくりなので、おおよその傾向を掴みましょう